
「祖父の遺品整理をしていたら、引き出しの奥からこの時計が出てきまして。止まったままなので動くかどうかも分からないのですが、価値があるものなら、きちんと手入れをして大切にしてくれる方に渡したいんです」。そんな控えめなご相談とともに、柔らかい布に包まれた一本の時計をお預かりしました。包みを解いた瞬間、特有の経年変化を遂げたシャンパンゴールドの文字盤が静かに現れました。それは1960年代、オメガの歴史においても極めて人気の高い『シーマスター デビル(Seamaster DeVille)』でした。このモデルは、もともと防水性の高い「シーマスター」のラインから派生し、後に独立したドレスライン「デビル」へと繋がる過渡期の非常にユニークな逸品です。当時のオメガが誇った薄型ムーブメントを、裏蓋のないワンピースケース(モノコック構造)に収めることで、高い防塵・防湿性とエレガントなフォルムを両立させています。現在では当たり前となった「防水ドレスウォッチ」というジャンルの先駆け的存在であり、ヴィンテージ時計愛好家の間では、そのシンプルかつ無駄のない造形美から、時代を超えて愛されるタイムレスな名機として知られています。鑑定において私が最も注視したのは、文字盤のオリジナリティと、ワンピースケース特有のコンディションです。ヴィンテージ時計は修理の過程で文字盤を書き換える(リダン)ことも多いのですが、今回のお品物は当時のままの質感を保っており、インデックスの腐食も最小限でした。また、風防の中央に刻印された「Ω」のシークレットマークも確認でき、パーツの整合性が非常に高い個体であると判断しました。機械は止まっていましたが、リューズを引いた際の感触からゼンマイや歯車の致命的な破損はないと推測。外装の磨きすぎによる痩せもなかったため、希少な「オリジナルコンディション」を最大限に評価し、ヴィンテージ相場における最高額をご提示しました。こうした古い機械式時計をお持ちの方へ、専門家の視点からよくお伝えしている注意点が「無理な動作確認の厳禁」です。何年も止まっていた時計を、確認のために力任せに振ったり、無理やりリューズを回したりすると、固着した古い潤滑油が原因で精密なパーツを傷つけてしまう恐れがあります。動かないからといって価値がなくなるわけではありませんので、止まったままの状態で安心してお持ちください。また、ヴィンテージ時計は現代の防水時計とは異なり、湿気や磁気には非常にデリケートです。洗面所などの水回りや、スマートフォンの近くに置かないことが、その美しさと資産価値を後世に残すための鉄則となります。ご提示した金額に、お客様は「ただの古い時計だと思っていましたが、そんな歴史や価値があったのですね。祖父も喜ぶと思います」と、晴れやかな笑顔で仰ってくださいました。私たちは、単に中古の時計を買い取るのではなく、その時計が刻んできた時間と、前オーナー様の想いを大切に受け取りたいと考えています。難波という活気ある地で、多くのヴィンテージウォッチと向き合ってきた知識を活かし、一本一本の背景にあるストーリーを汲み取った査定をお約束します。もし、お住まいの整理や遺品の中に眠っている古いオメガがございましたら、ぜひ一度その輝きを拝見させてください。



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